○岡崎市脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策推進条例

令和6年6月24日

条例第29号

目次

前文

第1章 総則(第1条~第6条)

第2章 総合的な施策の推進

第1節 気候変動対策実施計画の策定(第7条)

第2節 脱炭素まちづくり(第8条~第10条)

第3章 気候変動緩和策の推進

第1節 再生可能エネルギーの利用の促進(第11条・第12条)

第2節 事業活動における対策(第13条~第16条)

第3節 日常生活における対策(第17条・第18条)

第4節 交通における対策(第19条~第21条)

第5節 廃棄物に係る対策(第22条)

第6節 吸収源対策(第23条・第24条)

第4章 気候変動適応策の推進(第25条~第27条)

第5章 気候変動対策の普及啓発等(第28条~第31条)

附則

産業革命以後、化石燃料への過度な依存によるエネルギーの大量消費が行われた結果、近年、世界の平均気温は上昇し続け、集中豪雨、猛暑、海水面の上昇など地球温暖化に起因するとみられる現象が、人類にとって大きな脅威となっている。今や、地球温暖化ならぬ地球沸騰化の時代と言われており、気候変動による私たちの生活への影響は避けられない状況にある。

このような危機的状況の中、平成27年の気候変動に関する国際連合枠組条約の第21回締約国会議において、京都議定書の後継となるパリ協定が国際的な枠組みとして採択され、世界は共通の長期目標の下、脱炭素に向け大きく動き出したところである。

本市においても、これまで地球温暖化対策に関する計画を策定し、その推進を図ってきた。また、令和2年には、2050年までに市域の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指したゼロカーボンシティ宣言を行い、脱炭素社会の実現に向けた姿勢を示してきたところであるが、その志を具現化するためには、市民、事業者などの協力が不可欠である。

ここに、現在及び将来の市民が、健康で文化的な生活を営むことができるよう、脱炭素社会の実現に向け、市民、事業者、行政機関などあらゆる主体が気候変動に対する危機感を共有するとともに、積極的な気候変動対策を講じることを強く決意し、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、気候変動に起因して、生活、社会、経済及び自然環境における気候変動影響が生じていること並びにその影響が長期にわたり拡大するおそれがあることに鑑み、脱炭素社会の推進に関し、基本理念を定め、市、事業者及び市民の責務を明らかにし、気候変動対策の基本となる事項を定めることにより、現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 気候変動 気候変動適応法(平成30年法律第50号)第1条に規定する気候変動をいう。

(2) 気候変動影響 気候変動適応法第2条第1項に規定する気候変動影響をいう。

(3) 気候変動適応 気候変動適応法第2条第2項に規定する気候変動適応をいう。

(4) 気候変動緩和策 気候変動の原因となる温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化を図るための施策をいう。

(5) 気候変動適応策 地域の特性に応じた気候変動適応に関する施策をいう。

(6) 気候変動対策 気候変動緩和策及び気候変動適応策をいう。

(7) 温室効果ガス 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「法」という。)第2条第3項に規定する温室効果ガスをいう。

(8) 温室効果ガスの排出 法第2条第4項に規定する温室効果ガスの排出をいう。

(9) 脱炭素社会 法第2条の2に規定する脱炭素社会をいう。

(10) 再生可能エネルギー エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号)第2条第3項に規定する再生可能エネルギー源を利用して得ることができるエネルギーをいう。

(11) 再生可能エネルギーの導入等 次に掲げる行為をいう。

 太陽光を電気又は熱に変換する設備その他の再生可能エネルギーを発生させるために必要な設備(以下この号において「再生可能エネルギー設備」という。)を導入すること。

 再生可能エネルギーを効率的に利用するための設備又は発生させた再生可能エネルギーを自ら若しくは地域において自立的に利用するための設備を導入すること。

 再生可能エネルギー設備により自ら発生させた再生可能エネルギーを自ら利用すること。

 エネルギーの供給を他者から受けて利用する場合において、再生可能エネルギー又は再生可能エネルギーの占める割合が高いエネルギーの供給を受けて利用すること。

(12) 環境物品等 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)第2条第1項に規定する環境物品等をいう。

(13) 自動車等 道路交通法(昭和35年法律第105号)第84条第1項に規定する自動車等をいう。

(基本理念)

第3条 脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 脱炭素社会を実現できるよう、日常生活及び事業活動において、持続可能な社会経済システムへの転換を図ること。

(2) 市、事業者及び市民が脱炭素社会を実現することの重要性を認識し、それぞれの責務に基づき、自主的かつ積極的に気候変動対策に取り組むこと。

(3) 気候変動対策を通じて、環境、社会及び経済の課題解決に貢献すること。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(次条第1項及び第6条第1項において「基本理念」という。)にのっとり、気候変動対策を総合的かつ計画的に推進するため、自ら率先してこれに取り組み、脱炭素社会の実現に努めなければならない。

2 市は、気候変動対策の推進に当たっては、事業者及び市民と連携し、協働してこれを行わなければならない。

3 市は、事業者及び市民が行う気候変動対策を促進するために必要な措置を講じなければならない。

4 市は、自らの事務及び事業に関し、気候変動対策を講じなければならない。

5 市は、国及び他の地方公共団体と連携を図りながら、気候変動対策を効果的に推進しなければならない。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、基本理念にのっとり、気候変動対策の重要性について理解を深め、その事業活動に関し、当該対策を自主的かつ積極的に講ずるよう努めなければならない。

2 事業者は、市が実施する気候変動対策に協力するよう努めなければならない。

(市民の責務)

第6条 市民は、基本理念にのっとり、気候変動対策の重要性について理解を深め、その日常生活において、当該対策を自主的かつ積極的に講ずるよう努めなければならない。

2 市民は、市が実施する気候変動対策に協力するよう努めなければならない。

第2章 総合的な施策の推進

第1節 気候変動対策実施計画の策定

(実施計画の策定)

第7条 市は、気候変動対策を総合的かつ計画的に推進するため、当該対策の実施に関する計画を策定するものとする。

第2節 脱炭素まちづくり

(脱炭素まちづくりの推進)

第8条 市は、市街地の整備その他のまちづくりに関する施策の実施に当たっては、事業者及び市民と連携し、及び協働して、地域の特性を生かした再生可能エネルギーの利用、エネルギーの効率的な利用その他の環境への配慮が図られたまちづくりの推進に努めるものとする。

(促進区域の設定)

第9条 市は、法第21条第5項第2号に規定する促進区域を設定するものとする。

(建築物に係る温室効果ガスの排出の量の削減)

第10条 建築物の新築、増築又は改築をしようとする者は、当該建築物について、再生可能エネルギーの導入等、エネルギーの使用の合理化その他の温室効果ガスの排出の量の削減を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 市は、前項に規定する措置を図る取組を促進するため、情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。

第3章 気候変動緩和策の推進

第1節 再生可能エネルギーの利用の促進

(再生可能エネルギーの利用)

第11条 事業者及び市民は、その事業活動又は日常生活において、優先的に再生可能エネルギーを利用するよう努めるものとする。

2 市は、事業者及び市民による再生可能エネルギーの導入等を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

3 市は、事業者が行う再生可能エネルギーの有効利用その他の温室効果ガスの排出の量の削減に寄与する技術の研究及び製品の開発の支援に努めるものとする。

4 市は、市が所有する施設又は市が実施する事業において使用する電力その他のエネルギーの調達に当たっては、再生可能エネルギーの利用に努めるものとする。

(地域環境と調和した再生可能エネルギーの発電)

第12条 市、事業者及び市民は、再生可能エネルギー発電設備(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年法律第108号)第2条第2項に規定する再生可能エネルギー発電設備をいう。)を設置する際は、自然環境、生活環境その他の環境に及ぼす影響に鑑み、当該設備と地域環境が調和するよう努めるものとする。

第2節 事業活動における対策

(エネルギー使用量等の把握)

第13条 事業者は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その事業活動に伴うエネルギーの使用量及び温室効果ガスの排出の量の把握に努めるものとする。

(設備に係る温室効果ガスの排出の量の削減)

第14条 事業者は、その事業の用に供する設備について、温室効果ガスの排出の量の削減のための技術の進歩その他の事業活動を取り巻く状況の変化に応じ、温室効果ガスの排出の量の削減に資するものを選択し、又は使用するよう努めるものとする。

(環境物品等の選択)

第15条 市及び事業者は、その事業活動において、物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合には、環境物品等を優先的に選択するよう努めるものとする。

(中小企業者の気候変動緩和策に係る計画の策定)

第16条 中小企業者(中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者であって、市内に事務所を有するものをいう。)は、気候変動緩和策を計画的に推進するため、その事業活動に伴うエネルギーの使用の合理化その他温室効果ガスの排出の量の削減を図るための計画を作成するよう努めるものとする。

第3節 日常生活における対策

(環境に配慮した消費行動)

第17条 市民は、その日常生活において、物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合には、環境物品等を優先的に選択するよう努めるものとする。

2 事業者及び市民は、市内で生産された製品及び農産物を優先的に消費し、又は販売することにより、その輸送に伴う温室効果ガスの排出の量の削減に努めるものとする。

(環境に配慮した電気機器等の購入)

第18条 市民は、その日常生活において、電気機器、ガス器具その他のエネルギーを消費する機械器具を購入し、又は使用する場合には、温室効果ガスの排出の量がより少ないものを優先的に選択し、又は温室効果ガスの排出の量をより少なくする方法により使用するよう努めるものとする。

第4節 交通における対策

(公共交通機関又は自転車の利用等の推進)

第19条 市、事業者及び市民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その事業活動又は日常生活において、自動車等の使用に代えて、公共交通機関若しくは自転車の利用又は徒歩による移動に努めるものとする。

2 市は、公共交通機関又は自転車を利用しやすい環境の整備、温室効果ガスの排出の量がより少ない自動車等の利用促進その他の交通に係る温室効果ガスの排出の量の削減のための措置を講ずるよう努めるものとする。

(温室効果ガスの排出の量の少ない自動車等の購入)

第20条 市、事業者及び市民は、自動車等を購入し、又は使用する際は、その使用に伴う温室効果ガスの排出の量がより少ない自動車等を購入し、又は使用するよう努めるものとする。

(エコドライブの推進)

第21条 自動車等を運転する者は、自動車等の適正な整備及び温室効果ガスの排出の量がより少ない運転の方法(次項において「エコドライブ」という。)の実施に努めなければならない。

2 事業者は、その事業の用に供する自動車等を運転する者に対し、エコドライブの実施について指導を行う等適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

第5節 廃棄物に係る対策

(廃棄物の排出の抑制等)

第22条 事業者及び市民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その事業活動又は日常生活において、廃棄物の排出の抑制及び再生利用、物品等の再使用等資源の有効利用に努めるものとする。

2 事業者は、廃棄物の処理に当たっては、温室効果ガスの排出の量を削減するよう努めるものとする。

第6節 吸収源対策

(森林の保全)

第23条 市及び森林所有者(森林法(昭和26年法律第249号)第2条第2項に規定する者をいう。)は、相互に連携し、及び協働して、森林の適切な保全及び整備に努めるものとする。

2 市は、事業者、市民及び民間団体と連携し、及び協働して、市内で生産された木材その他の森林資源の利用の推進に努めるものとする。

3 市は、森林の有する温室効果ガスの吸収機能に関し、事業者及び市民の理解を深めるため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(緑化の推進)

第24条 市、事業者及び市民は、温室効果ガスの排出の量の削減を図るため、その所有し、又は管理する建築物及びその敷地の緑化に努めるものとする。

第4章 気候変動適応策の推進

(気候変動適応策の推進)

第25条 市は、気候変動適応策を推進するものとする。

2 事業者及び市民は、その事業活動又は日常生活において、気候変動影響及び気候変動適応に関する情報を収集し、市の気候変動適応策に協力するよう努めるものとする。

3 市は、気候変動影響及び気候変動適応に関し、事業者及び市民の理解を深めるため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(熱中症の予防)

第26条 市は、気候変動適応策の推進のため、気候変動影響を踏まえた熱中症の予防及びその啓発に係る施策を推進するものとする。

(災害レジリエンスの強化)

第27条 市、事業者及び市民は、気候変動によって引き起こされる災害に対し、被害を最小化する防災力及び復旧復興する回復力を強化するものとする。

第5章 気候変動対策の普及啓発等

(事業者への気候変動対策の推進)

第28条 市は、気候変動影響を踏まえ、気候変動対策を推進する事業者へ必要な支援を行うよう努めるものとする。

(気候変動対策に関する教育及び学習の推進)

第29条 市は、教育機関、事業者及び民間団体と連携し、及び協働して、あらゆる機会を通じて、全ての年代に対し、気候変動対策に関する教育及び学習を推進するよう努めるものとする。

(気候変動対策の啓発)

第30条 市は、事業者及び市民が気候変動対策に関する関心と理解を深めることができるよう啓発活動及び広報活動の充実に努めるものとする。

(地球温暖化対策地域協議会に対する支援)

第31条 市は、法第40条第1項に規定する地域協議会であって市長が定めるものが気候変動対策の促進に向けた普及啓発、情報提供その他の活動を積極的に行うことができるよう必要な支援に努めるものとする。

(施行期日)

1 この条例は、令和6年7月1日から施行する。

(岡崎市生活環境保全条例の一部改正)

2 岡崎市生活環境保全条例(平成18年岡崎市条例第19号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

岡崎市脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策推進条例

令和6年6月24日 条例第29号

(令和6年7月1日施行)

体系情報
第10編 市民生活/第1章 環境保全
沿革情報
令和6年6月24日 条例第29号